採蜜のその後

ハチミツは少しだけだが店に並んだ。

店主が「置いていいよ」と言ってくれたことで同時に私の次の作業が始まった。

商品にするには、いろいろクリアーしなくてはならない事がたくさんある。

店主に教わりながらやっと納品を終えた。

採蜜後10日ほどして巣に異常事態が起こっているのではないかと感じた。

巣の3階部分を外す時に、どうしても蜜がしたたり落ちる。

それをアリたちが見逃すわけはなく巣にはたくさんのアリが押し寄せていた。

だが、それだけではないことは次に見たときに分かった。

ミツバチたちは空中を飛び回り、巣の周りではミツバチ同士で噛みつき合っている。

たぶん別のグループのミツバチが蜜を盗りに来ているのだろう。

巣の中に大中小のアリたちが堂々と入り込みスズメバチが巣の周りにいるミツバチを喰いに来ている。

私は巣に近づくことができず少し離れたところに佇み巣を眺めていた。

すると左頬が「チクッ」とした。

初めて刺された。

異常事態は間違いない。

巣を開けてみた。

やはり巣板が落ちていた。

ハニカム構造は崩れ茶色の汚れが付着し中にはウジ虫(巣虫の幼虫)がいた。

それらを掻き出して2階部分に引っかかっている巣板を手探りで掻き落とした。

若干の巣虫の幼虫が逃げたが、殆どは捕まえた。

巣の中にカメラを入れて上に向けて撮影してみた。

今までの巣板の跡に作られ始めた巣板の方向が違うことから新たな巣板であることがわかった。

アリ対策としては退治用の駆除剤を置きスズメバチ対策用に以前も功を奏した金網を設置することにした。

最初のうちはミツバチたちは金網の広がった部分を探すのが大変だったようだ。

残念ながらスズメバチは易易と中に入り込む。

そしてミツバチを抱え込んで出てきた。

だがやはり抱えたままでは金網から出られない。

食いついたミツバチを放り出して逃げていった。

のんびりしているとスズメバチ自身がミツバチに殺られるからだ。

こころなしか巣に戻るミツバチが増えた気がする。

これでミツバチたちの活動が活発になり勢力を戻してくれることを期待している。

私は盗蜜の張本人だが、私が盗らなくても巣虫たちが大惨事を起こしていたであろう。

と思いたい。