ダイヤモンドは砕けない 第一章

わざわざ帰省した先で『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』を鑑賞。都内だとほとんど上映時間が限定されていたし、シネコンとなった故郷の映画館も確認したかったものでね。この感想はネタばれアリ!

結論から言えば面白かった。つーか、ちゃんと映画の作り方になっていた。原作では形兆が戦いに身を投じるきっかけでしかなく描写としては希薄だった祖父との関係をかなり掘り下げており、祖父・良平役を國村隼が手堅く演じている。

この映画では敵をアンジェロと虹村兄弟に絞っていたが、虹村形兆が丹念に弓と矢でスタンドを増やしていく描写があり、形兆とアンジェロに上下関係をつけ、尚且つ虹村兄弟とアンジェロの父親(家族)に関する考え方の違いを浮き彫りにさせ、その上で父親不在の仗助を囲む東方家とコントラストを描くように再構築されている。

もちろん登場人物のヘアスタイルや衣装から醸し出すコスプレ感に難はある。仗助の制服の色は黒だけどオーラの色が紫ってアレンジは良かったし、承太郎の白いコートとのコントラストも悪くはないのだが。

冒頭の不良との絡みは溜めが足りねぇとか、1本の映画として見た場合にジョースター家の使者である空条承太郎が日本人なのは説明すればクドいけど、無いと違和感だけが残ってしまう。

スタンド能力も見えない力として描写している分には面白いんだけど、姿を現してしまうとまるでCGIがゲームのようだし邦画はそういうのが上手くならないよねー。

原作のキャラクターの良さに助けられている部分もあるが、役者は皆好演。山崎賢人はスカした役柄が多いという印象だが、この映画では頭の回転こそ早く実直でもあるがプッツンし易い仗助の子供っぽさを出している。やっぱり仗助って、好きな主人公なんだよね。

一方で承太郎役の伊勢谷友介は漫画っぽい説明台詞はかなり割り切った演技になってるが、良い台詞のところはやっぱ良いと唸らせる。仇役ではアンジェロ役の山田孝之はドス黒い闇、形兆役の岡田将生は呪われた宿命の憂いを醸し出して出色。

今回、康一は狂言回し(転校生ポジ)で山岸由花子は更にそのオマケという扱いだが、この映画に限っていえば康一が仗助にストーカーしているようにも見えなくもなかったり。

一部で物議を醸し出したロケ地のスペイン(シッチェス)だが、ちゃんと「杜王町」に見える。映像上で問題なければ日本が舞台であっても日本のロケに拘る必要は無い。ロケ地に関して文句言ってた人達の気がしれんよ。また台詞上で「トラサルディー」の話題は出たり、康一の部屋に「ピンクダークの少年」があったり、原作の展開をかなり削っているが、拾うところは拾うし膨らませるところは膨らませている。

最後、仗助は承太郎に自分の名前を名づけたのは祖父だと告げる。その名の由来を噛み締めて亡き祖父の使命を受け継ぐべく、形兆を倒した謎のスタンド使いと戦う事を誓う形兆は、複雑な家庭と不思議な能力を身につけた少年が、戦いの日々に身を投じるのに十分な説得力を持っていた。

そして仗助、康一、億泰は「友人」という新たなる関係をスタートさせる。一方で弓と矢を破壊し形兆を殺害したスタンドの主である殺人鬼の家屋をクレジットの合間に挿入させるのはアメコミ映画っぽくもあった。

惜しむらくはこの映画は第一章だけで終わり、続きが作れなそうな感じなところだな。ま、この映画の批判は声が大きいだけで的外れだったし、やっぱり自分の感性を信じるしかないな〜。